これは1900年代にかの有名な英国人作家D.H.ローレンスが発した言葉です。 彼は当時まだあまり知られていなかったサルデーニャ島を世の中に広く紹介した人の一人。
サルデーニャはこれまでに見たことがない、 出会ったことのない、 唯一無二の魅力にあふれた島だと語っています。
古代遺跡に覆われた、 青空の下の博物館のような島、サルデーニャ。 7000以上のヌラーゲ(この島でしか見られない何千年もの歴史を持つ建造物)や“巨人の墓”“妖精の家”“メンヒル”と
呼ばれる古代文明が残した遺跡が今も島を覆っています。
手つかずの素晴らしい自然はこの島の魅力の一つ。 サルデーニャの海は世界でもっとも美しい海の一つとして知られ、 内陸にはヨーロッパでもっとも深いキャニオンを有しています。 その雄大な自然もさることながら、 島を訪れる人をもっとも魅了するのは、 いたるところに見られる何千年もの歴史の足跡。 郷土料理から伝統衣装、 独自の言語から民族舞踊、 宝飾品から
ビッソ(古い歴史を持つ特殊な織物)まで、 サルデーニャ人の生活には今も悠久の歴史を垣間見ることができるのです。
サルデーニャと日本は不思議な糸で結ばれているようです。
沖縄とサルデーニャはどちらも「ブルーゾーン」と名付けられた世界に数か所しかない長寿ゾーンの一つとして挙げられています。
その長生きの秘訣はおそらく、 澄んだ空気と健康的な食生活、 水質、 適度な運動と地方文化の中にあると言われています。
サルデーニャ自治州の州都カリアリ。 港に面した小高い丘の上にたつ旧市街は3つの塔と城壁に囲まれ、 狭い路地の合間にはサンタ・マリア大聖堂や考古学博物館、 カリアリの全景を一望できる美しいサン・レミ要塞などの見所が凝縮。 カリアリは紀元前800年ごろ、 当時地中海で広く海上交易を行っていたフェニキア人によって町の基礎が作られ、 13世紀ピサ支配の時代に今見られる城壁と塔に囲まれた町並みが完成しました。 町の出入り口にもなっていた3つの塔「象の塔」、 「サン・パンクラツィオの塔」、 「獅子の塔」は典型的なピサ様式で木造の骨格と白い大理石が美しく、 屋上まで階段を上るとすばらしいパノラマが見られます。
城壁のすぐ外には古代ローマ時代の巨大な円形劇場が今も残り、 城壁から港に下る坂道にはレストランやショッピングを楽しめる通りが並び、 観光客だけでなく地元の人も繰り出し夜遅くまでにぎわっています。 この辺りにたくさんある教会の中でもサルデーニャ人にとってもっとも重要なのは、 狭い通りにひっそりとたたずむ聖エフィジオ教会。 中世に大流行した黒死病ペストからカリアリを救ってくれた聖エフィジオが祀られるこの教会は、 毎年5月1日に行われるヨーロッパでもっとも絵画的なお祭り、 聖エフィジオ祭の出発点でもあります。
ショッピングに疲れたら町から少し離れてポエット海岸へ。 ヨーロッパ一長い海岸と言われ、 夏になると世界中から訪れる海水浴客でにぎわいます。 海岸近くのモレンタルジュス自然公園は貴重なエコシステムを持つ湿地帯として知られ、 めずらしい動植物やたくさんのピンクフラミンゴを観察することができます。
海辺に颯爽とそびえるアルゲーロの町は、 海から見ると重厚な要塞に守られ、 侵略者から町を守ろうとした当時のアルゲーロの強い意志を目の前に見るようですが、 町へ上がるとさわやかな海風と心地よい都市空間が広がり、 ヨーロッパではとても人気がある観光都市です。 VIPがこぞって集まるエメラルド海岸とは違い、 アルゲーロはお金持ちから庶民まで気軽に過ごせる懐の深い町で、 しかも近郊には宝石のような海岸がたくさん。
伊勢えびやウニなど魚介を中心とした郷土料理やおいしいワイン、 オリ ーブオイルも間違いなく魅力の一つでしょう。 夏の夜にはライトアップされた町と海に挟まれた心地いい要塞の散歩道を歩いたり、 ライブや演劇を楽しんだりとナイトスポットも充実。
アルゲーロの堅固な要塞は12世紀、 ジェノバ支配の時代につくられました。 14世紀になるとスペインから来たアラゴン人とカタルーニャ人に征服され、 その後スペイン支配は400年以上も続くことになります。 現在も話されるカタルーニャ語や、 スペイン風の町並み、 郷土料理など、 他の町以上にスペインの面影が色濃く残るのはそのためです。
町から少し行くとその幻想的な美しさで知られる“ネプチューンの洞窟” があります。 カッチャ岬の断崖絶壁の下に形成されたその鍾乳洞は海とつながっていて、 晴れた日は海から専用のボートで、 体力に自信のある人は絶壁の上から目もくらむような656段の階段を下りて洞窟の内部を見学することができます。 階段を使う場合は帰りも必ず階段で帰らなければいけないのでご注意を!
バルバージャ地方と呼ばれる内陸部の険しい地域にあるオルゴーゾロ村を中心にこの一帯はかつて貧困を極め、 過度な警戒心と郷土への強い愛情が村人を一般社会から孤立させ、 盗賊行為が横行したことで知られています。 そんな少し暗い過去をもつオルゴーゾロですが、 村に描かれるようになった壁画をきっかけに、 どんな時もアイデンティティを失わなかった村人の誇り高さや古い習慣、 ライフスタイルが国内外から注目を浴びるようになりました。
“ムラーレス”とよばれる壁画アートは1969年にミラノのアナキズム団体によって描かれたのをきっかけに、 いろいろなアーティストたちがそれに続くようになりました。 今では150ほどある壁画はピカソで有名なキュ ービズムスタイルやシュルレアリスム、 だまし絵など様々な画法で、 村の歴史や文化、 政治・社会への批判やメッセージが描かれています。
また、 牧畜文化に支えられる村の郷土料理も見逃せません。 仔豚の丸焼きや羊のラグーのラビオリ、 生ハムやチーズはすべてバルバージャの大自然の恵み。 土壌、 気候、 環境、 すべてにすばらしい条件がそろっているにもかかわらず粗削りであったワインも近年協同組合の誕生で洗練された贅沢なカンノナウ(*サルデーニャを代表する赤ワイン)の生産に成功しています。
サルデーニャにはそれぞれの町・村ごとに独自の伝統衣装があることで知られていますが、 この村の衣装は中でも印象的です。 オルゴーゾロの蚕から作られる艶やかな黄色の絹糸とサフランで染められた柔らかなオレンジ色の絹糸で織りこまれた美しい帯ですっぽりと覆われた頭、 三重のスカートにカラフルな前掛け。 5月1日の聖エフィジオ祭で、ぜひ何千もの伝統衣装の島民の中からオルゴーゾロの女性を見つけてみてください。
“イタリアで最も美しい村”の一つにも選ばれた、 丘の斜面にならぶ色とりどりの建物がかわいいボーザの町。 サルデーニャで唯一航行可能な川を町中にもち、 海上交易にはとても条件がよいため古代ローマ時代にはすでに豊かな暮らしをしていたと言われています。 州都カリアリ同様、 12世紀サルデーニャでピサ人やジェノバ人が権力をふるっていた時代に、 ピサのマラスピーナ家によって丘の上に城が築かれ、 その後城を中心に町が発展し今見られるカラフルな町並みが形成されました。 川沿いに並ぶかわいい三角屋根の建物は1800年代に町の主要産業であった皮なめし工場の跡地で、 今では重要な産業遺産として保存されています。
フィリグラーナと呼ばれる伝統的な技法を使った金銀ジュエリーの工房や、 伝統衣装にも欠かせないレース編みのアトリエ、 特産の珊瑚細工のお店、 そして軒先でかごを編む女性。。。 今も伝統工芸が深く根付いていることがわかります。 古くから続く宗教行事やお祭りも一年を通して数多くおこなわれるのもボーザの魅力の一つです。
そして魚介を中心とした郷土料理とともに見逃せないのが、 白ワインのマルヴァジア。 マルヴァジアという古い白ブドウ品種は地中海全体に普及していますが、 特に熟成された“マルヴァジア・ディ・ボーザ”はとても特徴的で、 濃い麦わら色と深い味わいはサルデーニャの焼き菓子やチ ョコレートなどによく合います。